お笑い

ツッコミを上達させるには~「衣のない海老フライ」を見てあなたは何を思う~

いや「題名のない音楽会」みたいに言うな!※言ってません

「面白いツッコミをしたい」という気持ちを持つこと、これは関西で生まれ育ち、お笑い芸人を神と崇める私に限った話ではありません。人類は皆生まれながらにして、この欲求から逃れられないのです。
ある研究者の話では男は女の7倍ツッコみたいらしいです。

ただし、いくら面白くツッコみたいからといって、プロであるお笑い芸人のツッコミをそのまま真似をするのは非常に危険な行為です。筆者が職場の飲み会で「高低差で耳キーンなるわ!」などとドヤろうものなら、高低差ではなく周りとの温度差に苦しめられることになるでしょう。

みんなでワイワイ楽しくボウリングをやりたいのに、一人だけ15ポンドのマイボールでカーブ連投してたら引かれます。あれはプロがやるから見る側も受け入れられているのです。一口にプロの技を学ぶと言っても、一般ピーポーが日常生活で上手く活用するにはちょうどいい塩梅というものがあります。というわけでこの記事では、「ちょうどいい」ツッコミについて考えていきます。

そもそも、ツッコミとは?

ある事象に対して皆が抱く感想を「代弁」することだと僕は思ってます。単なる指摘や揚げ足とりであってはならないということですね。
そしてその際、少しだけ自分なりの表現に言い換えてあげることで、それを聞いた人の感想との間にギャップ(裏切り)が生じます。これが「面白さ」になります。
注意したいのは、このギャップは大きければ大きいほど面白くなるわけではないということです。あくまでも「代弁」なので、聞いた人に共感もしてもらう必要があります。これが「ちょうどよさ」になります。

では、少し具体的なシチュエーションを挙げて考えてみましょう。

衣がついていない海老フライ=?

突然ですが、あなたが友人と海老フライを作る際、友人が海老に衣を全然つけなかったとします。あなたはなんとツッコみますか?

・衣が少なすぎるやろ!
→これだと直接的過ぎてただの指摘になってしまいますし、

・海老の全裸見せらても嬉しくないねん!
・海老を買うお金はあるのに衣を買うお金はないんか?
→素人の分際でこんなことを言ってしまうとやや“狙い過ぎ感”が出てしまいます。

では、プロはどうするのか?


同じようなシチュエーションで、まえだまえだのお兄ちゃん航基くんは一言、こうツッコみました。

うわ、ヘルシーになってるやん!

素晴らしくないですか?

衣が少ない→ヘルシーというシンプルで的を射た表現でありながら、少しユーモアが加わっており、かといって決して狙い過ぎていない。まさに我々が目指すべき、理想の“ちょうどよさ”じゃないでしょうか。
当然のように彼らのことをこれまで呼び捨てにしていた皆さん、明日からはまえだまえだ「さん」と呼ぶようにしてくださいね。

顔を隠して写真を撮る=?

もう一ついきましょう。顔にあるブツブツのせいで写真うつりを気にするあなたに対し、
「じゃあ、写真撮られる時は両手で顔を隠せばいい」と先輩が言いました。あなたは何と返しますか?

・確かに手の甲の方がスベスベしてますけど!
・画素数の無駄使いでしょ!
→我ながら酷いですね。二つ目とか典型的な芸人に憧れてる痛いヤツのツッコミです。お手本はよ。

かなり特徴のあるシチュエーションなので誰のことか分かった方も多そうですが、ブラックマヨネーズ吉田は一言、こうツッコみました。

僕だけ思い出を残せてないじゃないですか!

天才じゃないですか?

顔が映らない→思い出を残せないというなんともスマートな言い換え。
共感とギャップを見事に両立させています。さすがはM-1チャンピオンですね。

予定よりかなり長くなってしまいましたが、「ギャップ」と「共感」の重要性は十分に感じてもらえたかと思います。皆さんも今後の会話では、この二つのバランスを意識してツッコんでみてください。
以上、M-1グランプリ2017初戦敗退の輪切りがお届けしました。